第90章

「……で、あっさり帰ってきたってわけ? 向こう、ほかに何か言ってた?」

北野紫苑がぱちりと瞬きをして、堪えきれず口を開く。

「本当は紫苑も分かってるでしょ。今、藤原家に入れるなら、あなたにとって損はない。……でも、選ぶのはあなた。私は口出ししない。ただ、自分の気持ちはちゃんと整理して。あとで後悔しないように」

「向こうも、残念だったんだと思う。引き止められて、ずいぶん話したよ。……それで、やっと出してもらえた」

松原南は抱き枕を胸に抱え、ゆっくりと言葉を継ぐ。

「でも最後は、私の意思を尊重してくれた。クルミを連れて遊びに来る時間もくれるって。私、この選択を後悔するとは思ってない。だ...

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