第92章

「最初から、断る余地なんてくれなかったじゃないですか」

松原南は目を伏せたまま、赤く滲んだ瞳を隠すように言った。

「約束します。もうこの件は追いません。でも……刑務所の中で何かあったら、必ず私に言ってください。絶対に」

父が安心できるなら。

少しくらい耳ざわりのいいことを言ったって、構わない。

「南。口だけはやめろ。守れないなら……もう俺を父親だと思うな!」

松原の父は強い口調で言い切る。だが、ほんの少し間を置いて、声が和らいだ。

「外でちゃんと自分を守れ。俺は中で平気だ。何もない。お前とクルミを守ること、それが一番大事だ。いいな?」

袖口の下。隠しきれない傷痕が、やけに目に...

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