第95章

特別補佐は時間に正確だった。

松原南が車に乗り込み、慌ただしく病院へ駆けつけた頃でも、まだ5時15分にすぎない。

「松原さん、ですよね?」

特別補佐から階数を聞いていた松原南は、そのまま病院の中へ入った。

だがエレベーターを降りた途端、白衣の医師と鉢合わせる。しかも――こちらを知っているような口ぶりだった。

「はい、そうです」

警戒するように顔を上げ、二秒ほど迷ってから唇を結び直す。

「……どうして私のことを?」

この病院に来るのは初めてだ。目の前の医師にも見覚えはない。それなのに、なぜ一目で分かったのか。

「藤原さんから事前に伺ってましてね。松原さんなら、そのまま708号...

ログインして続きを読む