第56章 黒衣の人

北野美月の目は青く輝くネックレスに引き寄せられ、胸の内に懐かしい感情が湧き上がってきた。彼女は海での冒険を過ごした日々を思い出していた。

エリスは今、どうしているのだろう?

なぜハート・オブ・オーシャンが流出したのか?

このネックレスがなぜオークション会場に?

北野美月の回想は周囲の熱気に影響されることなく、人々は次々とプレートを上げて競り合っていた。

彼女は目を細め、どこか違和感を覚えながらそのネックレスを見つめた。舞台に近づき、細部をより詳しく見ようとした瞬間、会場の静けさが突然の騒動で破られた。

「12億!」体格の良い競り人が雷のような声で価格を叫び、一瞬で全員の注目を集め...

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