第15話 アシュトンの試金石

フェリクス・アシュトンは、食堂の入口で冴月を呼び止めた。

「君がイザベラ・フォン・アルドレ? 急に声をかけて悪いんだけど――僕はフェリクス・アシュトン。公爵の友人だ。きっと、君は僕のことなんて覚えてないよね」

金髪の青年は、新しいおもちゃを見つけた猟犬のような笑みを浮かべていた。

冴月は、実際のところ彼を覚えていなかった。原作でのフェリクスは、三流の取り巻きにすぎず、セドリックの背後で「貴公子らしい空気」を演出する役目しか与えられていなかったからだ。

「アシュトン様」

「フェリクスでいいよ」

彼は、いかにも人懐こい調子で冴月の歩幅に合わせてくる。

「秋の夜会で君はずいぶん目立って...

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