第17話 朝靄の中で

夜明けの光が城壁の欠け目から差し込み、冴月は青石の敷石に降りた霜を一枚ずつ数えていた。

三十七枚目の石。そのひび割れのあいだから、細い氷草が一本だけ顔を出している。彼女は無言で足を上げ、それを踏み潰した。

背後で、宿の階段を下りてくる足音がした。昨日より、二拍ぶんだけ遅い。

アーサーは彼女から三歩離れたところで立ち止まった。襟元はきちんと閉められておらず、喉仏の少し上には、暗い赤色の引っかき傷が残っている。昨夜、エレナが暴れたときにつけたものだ。

「手当てしたほうがいいんじゃない」

冴月は振り返らないまま言った。

「もうした」

「そういう意味じゃないわ。隠しなさいってこと」

彼...

ログインして続きを読む