第19話 賭け

フェリクスは扉のそばで固まったまま、口を二度ほど開きかけて、ようやく一言を絞り出した。

「本気で言ってるのか?」

「私が冗談を言ってるように見える?」

イザベラは顎を少し上げ、いったん窓の外の空模様へ視線を流してから、ゆっくりとそれを戻した。

「期末の学術弁論は、内院の老教授たちが審査するのよ。お題は錬金術の原理と法制史の交差応用を避けて通れない。前学期の合格率は三割、最高評価を取れたのは一人だけ」

フェリクスは声を潜め、それこそ危険地帯の地図でも手渡すみたいな口ぶりで続けた。

「そして、その一人が今、君の目の前に立っている」

セドリックはすでに足を止め、半身になって彼女を見てい...

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