第33話 暗号

金獅子亭から主任がいなくなって、店の空気からは、熟成したウイスキーに馬鞭草のポマードを混ぜたような、あの癖のある匂いが一枚ぶん剥がれ落ちたみたいだった。

冴月は五日目の売上金を数えた。

銀貨十七枚、銅貨六枚。

主任がいた頃より三割も多い。

メニューの綴りミスを見つけては執拗に減給してくる人間も、もういない。

順調に稼げているはずなのに、彼女の胸の中の焦りは、むしろ一段ぶん増していた。

秋宴で発生した「あやまちを悟って引き返す」系の任務は、すでにシステム欄の中で十一日も腐り続けている。

日付が零時を回るたび、システムは赤いカウントダウンを一行送りつけてきた。それはまるで、家賃か管理...

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