第38話 五ミリ

石畳の隙間から草が伸びている馬車溜まりで、桐島冴月は青い幌のついた小型馬車の脇に立ち、牽き馬をじっと見上げていた。

赤みがかった栗色の毛並みは艶やかで、肩までの高さは一六〇センチ近くある。四肢は細く、それでいて無駄のない力強さがあり、たてがみは丁寧に編み込まれていた。

学院の隣が厩舎だったから、彼女には一目でわかる。純血のアラビア種だ。市価にすれば、一般労働者が二十年、飲まず食わずで働いてようやく届くかどうかという額になる。

「……『おつかい用の馬車』って」

冴月は顔を上げ、瀬川律を見た。

「まさか、これのことを言ってるの」

律は御者台に腰掛けたまま、いかにも平然とした顔で答える。...

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