第45話 跪いて

ルイーザのひと言は、まるで砕けた氷をコップの水に放り込んだみたいだった。大した勢いはないのに、テーブルについた全員の神経をぴしゃりと打った。

冴月は視線を上げる。顔には、ちょうどいい程度の戸惑いだけを浮かべた。

「飛雁湖?」

まるで昨日何を食べたか思い出すような軽さで、彼女は言う。

「ええ、一度だけ行ったことがあるわ。気分転換に」

フェリクスが口にしかけていた半端な言葉には、あえて触れなかった。案の定、彼は席でわずかに身体を強ばらせている。今日はこの少年が、意外なほど彼女の手間を省いてくれていた。先に「口外しない」と誓った以上、本当に何も言わないつもりらしい。ただ視線を別のほうへ逃が...

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