第50話 寝不足

「もうキスしない」

冴月は彼の身体の上からひらりと降りると、つんと顔をそむけて歩き出した。

キスに疲れた、というのはたしかにある。けれど問題はそこではない。律の態度が、あまりにも適当だったのだ。眠さでまぶたは半分閉じかけていて、まるで毎日のルーティンでもこなしているみたいな顔で、ただ唇を重ねてくるだけ。

桐島冴月が、こんなふうに扱われたことなんて一度でもあっただろうか。

それは彼女の魅力を根本から否定するようなもので、控えめに言っても屈辱だった。

すると濑川律が、離れかけた彼女の腕を引いて引き戻した。

「待って。まだシナリオが終わってない。今やめたら、ここまでやったのが全部無...

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