第7話 縫い目の温度
侍従たちが拾い集める手つきは、何かしらの汚染源を清めるみたいに早かった。冴月は床に座ったまま、『帝国紋章学考』が拾い上げられ、侍従の懐に押し込まれるのを眺めた。動かなかった。言葉もなかった。
火は、古文書閲覧室の東側の小さな中庭で焚かれた。
彼女は高い窓の内側から見た。黄赤い炎が頁の端を舐め、最初は焦げた一角、それから丸まる一枚。見えざる手に握り潰されるみたいに。
革の燃える匂いと、古い紙の焦げ苦い匂いが混じり合い、古の呪術が空気の中で揮発するようだった。炎が頁を喰らう音は細かくて、無数の虫が同時に踏み潰されるみたいだった。
冴月は窓の下に立ったまま、冷たい硝子に鼻先を押し付け、最後の...
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チャプター
1. 第1話 墨の乾く前に
2. 第2話 秋宴の客
3. 第3話 踊りのあとで
4. 第4話 薔薇迷宮の夜
5. 第5話 運命の系統
6. 第6話 焚書の公爵
7. 第7話 縫い目の温度
8. 第8話 九つの金貨
9. 第9話 屋根裏の冬
10. 第10話 鮭のおにぎり
11. 第11話 胸針の罪
12. 第12話 社交死刑
13. 第13話 割席
14. 第14話 空腹の酒
15. 第15話 アシュトンの試金石
16. 第16話 介抱の代償
17. 第17話 朝靄の中で
18. 第18話 拒絶の理由
19. 第19話 賭け
20. 第20話 第八十七点
21. 第21話 傍観者
22. 第22話 三倍返し
23. 第23話 瓦礫の挨拶
24. 第24話 雨の暗道
25. 第25話 傘の下
26. 第26話 芝生の向こう
27. 第27話 金獅子の夜
28. 第28話 禁じられた部屋
29. 第29話 判決文
30. 第30話 薔薇糖
31. 第31話 演技の代償
32. 第32話 唇の嘘
33. 第33話 暗号
34. 第34話 医館に行かないと治っちゃう
35. 第35話 同好
36. 第36話 寝言
37. 第37話 飛雁湖
38. 第38話 五ミリ
39. 第39話 嘘
40. 第40話 壮工
41. 第41話 誓い
42. 第42話 誤解
43. 第43話 知らない人
44. 第44話 信じる
45. 第45話 跪いて
46. 第46話 スリッパ
47. 第47話 偽物の高定
48. 第48話 大切な人
49. 第49話 演技
50. 第50話 寝不足
51. 第51話 魔女
52. 第52話 童謡
53. 第53話 来訪者
54. 第54話 抵抗
55. 第55話 代償
56. 第56話 手を洗った
57. 第57話 悪人
58. 第58話 白
59. 第59話 駅前
60. 第60話 忘れられない
61. 第61話 加害者
62. 第62話 本金
63. 第63話 三人
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