第55章
その力に引かれ、私は彼の胸の中へと引き寄せられていた。
「橘さん、落ち着いて。彼らは追ってきていません」
神崎玲也の広い胸に、私はすっぽりと包み込まれてしまった。
「すみません!」
慌てて彼から距離を取ったが、次の瞬間、それではあまりに冷たい仕打ちではないかと思い直した。
もし神崎玲也が庇ってくれなければ、今の一件で、お腹の子は無事では済まなかったかもしれない。
しかし……。
私は拳を握りしめ、ゆっくりと俯いた。そうすれば、隠しきれない猜疑心を彼に見られずに済むと思ったからだ。
「大丈夫ですよ。お怪我がなくて何よりです」
視界に、一足の黒い革靴が映り込む。
彼が、すぐ近くま...
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