第124章

角本祥治は細かく破いた退職願をゴミ箱へ放り込み、ぱんぱんと手を払った。初音を見るその眼差しには、言葉にできない何かが混じっている。

「弓月さん」

初音は彼を見返す。

「はい?」

角本祥治はゆっくりと口を開いた。

「俺が残ることにしたのは、あんたに説得されたからじゃない。自分で納得したからだ」

彼は少し間を置き、続けた。

「……それでも、礼は言っておく」

言い捨てると、大股で部屋を出て行った。

初音は椅子に座ったまま、閉ざされたドアを見つめ、くすくすと笑い声を漏らした。

雪菜のことはずっと嫌いだったが、角本祥治の一件に関しては、彼女に感謝しなければならない。何しろ、自分の研...

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