第百二十七章

悟に腕を強く引かれ、前へ前へと走らされながらも、初音の視線は釘付けになったように、前を走るその背中から離れなかった。

和也は自分のコートで雪菜をすっぽりと包み込み、彼女を腕の中に抱え込むようにして、背を丸めて煙や飛び散る破片から守っていた。

その足取りは力強く、そして速い。彼女を抱き寄せる腕には微塵の迷いもなく、一歩踏み出すごとに彼女の安全を確かなものにしている。

初音の心を揺さぶったあの些細な優しさなど、すべては彼女の独りよがりな錯覚に過ぎなかったのだ。

本当の危機が訪れた瞬間、和也が守りたかったのは雪菜ただ一人。

そして初音は、無造作に突き飛ばされ、見捨てられるだけの存在でしか...

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