第53章

初音は無意識に手を伸ばして触れ、自分の頬がまだ腫れていることを思い出した。

「大丈夫」彼女は軽く笑った。「これ、藤原グループからのライセンス契約書。見て。今後この特許はうちが無償で使えるし、藤原グループもこの分野の競争から手を引くから」

「特許自体は失ったけど、これで少しは損失を取り戻せるはずよ」

悟は契約書には目もくれず、ただ彼女の顔を見つめていた。その瞳が微かに揺れている。

「契約書のことなんて聞いてない。君の顔のことだ」

初音は認めるしかなかった。

「自分で叩いたの」

悟は眉をひそめる。

「和也に強要されたのか?」

「私が彼に強要したって言うべきかもね。彼はただ、謝れ...

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