第59章

初音はメモ用紙を摘まんだまま、きゅっと指に力を込めた。

和也はそれをちらりと見て、一つ空咳をした。

「あー……それは雪菜がふざけて貼ったんだ。あいつ、たまに俺の車に乗ると、適当なものを貼りたがるから」

初音はたまらず口を開いた。

「でも、私には絶対に許さないのに、彼女のことは何度も甘やかしてる」

和也は返す言葉がなかった。本当ならこう言えたはずだ。雪菜は昔からこういうやつだし、俺はあいつが好きだから甘やかしている。だがお前のことは好きじゃないし、勝手にすり寄ってきたのはお前の方だ、と。

二年前なら、そんな言葉も簡単に口に出せた。もっと前なら、こんなくだらない質問には答える気すら起...

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