第108章 あいつがいるから帰れないわけじゃない

アレックス・フィリップ視点

呼吸が、一瞬だけ重くなる。

――分かっている。こういう手を打てば、どうなるか。

だからこそ、絶対に踏み越えてはいけない。

本来なら。

唇をきゅっと結び、視線を上げた時には、もう決めていた。

「交換条件だ。エーダーは、俺に母親と先に面会させろ」

「人員を動かせ。位置を確定した瞬間、病院を力で押さえる。母親は俺の管轄の病院へ即時移送だ」

ケントが息を呑む。

「ボス……当主と正面からやり合うおつもりですか?」

俺は小さく頷いた。瞳の奥に、殺意が沈む。

ケントは信じられない、とでも言いたげに目を見開く。

「ボス、危険すぎます! 計画より丸一年も前倒...

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