第110章 岸に寄れない船

オーロラ・ロスの視点

私は眉をひそめ、彼が服を着直していくのを理解できないまま見つめた。

……治療、終わり?

立ち上がる。

「じゃあ、私の荷物を取りに行くね」

背中に刺さる視線を感じながら二階へ上がり、書斎で自分の物をまとめた。もう一度リビングの前を通りかかると、彼はさっきと同じ姿勢のまま動かず、頭を垂れている。

少し考えて、面倒を避けるために一応声をかけた。

「用がないなら、先に失礼するね」

「オーロラ」

苛立ちを表に出さないよう押し込み、振り返る。

「母が目を覚ました」

「……」

一瞬、言葉が止まった。

アレックスの母――ルナ・アメリー。

綺麗で、穏やかで、い...

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