第113章 怒らせた相手

オーロラ・ロス視点

「……私の話、聞いてる?」

「オーロラ」

大きな手のひらが目の前でひらりと揺れて、ぼんやりしていた意識が現実へ引き戻される。

煌びやかな最上階のレストラン。向かいのルイが、どこか困ったように手を引っ込めた。

「何回も呼んだんだけど」

「ごめん」

燕尾服のウェイターが身をかがめ、ステーキをそっと置くと、音も立てずに去っていく。

この店の個室は、互いを透明なガラスで仕切ってある。姿は見えるのに、声はほとんど漏れない造りだ。

夜景を切り取るこの個室には、ほどなくして私とルイの声だけが残った。

ルイは優雅に卓上の温かいおしぼりを取り、指先を丁寧に拭う。

「何...

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