第6章 なるべく早くアレックスとの関係を解消する

オーロラ・ロス 視点

エイミーと細部を詰め終えた頃には、秘書はとっくに退勤していた。私はついでに社内の休憩室でシャワーを浴びる。

ぬるい湯が肌をすべっていくたび、ここ数日の疲れが少しずつ剥がれ落ちていく気がした。

浴室を出た途端、また着信音。

エイミーから注意事項でも来たのかと思って、足早にスマホを取る。

――でも表示されたのは、知らない番号だった。

どうしてだろう。理由なんてないのに、直感で分かった。アレックスだ、と。

時刻を見て、はっとする。今日一日、会社に籠もりっぱなしだった。もう夜だ。

迷ってから、通話を繋ぐ。

「アレックス?」

返ってきた声は、氷みたいに冷たい。

「時間通りに帰ってベッドに入れ。それも俺が教えるのか?」

「……」

川の苑へ戻ると、アレックスは暗紅色のシルクのバスローブ姿でソファにだらりと凭れていた。

私を見るなり、グラスを揺らして口角を上げる。

「オーロラ。金主より忙しい愛人なんて、見たことない」

皮肉は無視して、正直に答えた。

「ごめん。会社が立て込んでて」

「そんな話を聞きたいんじゃない」

深い碧い目が、私を絡め取る。甘く、逃がさない声。

「今お前がやるべきは――俺を満足させることだ」

そう言って、彼はだらしなく脚を開いた。

バスローブの下は、何もない。

剥き出しの欲望がそこにあって、命令は言葉にしなくても分かった。跪け。口でしろ。

全身が強張る。

開いた襟元から覗く胸板は、どんな女でも息を呑む造形だ。なのに私の胃の奥は、ひりつくみたいに重い。

屈辱のためだけの行為は、毎回苦しい。

それでも――これは取引だ。彼は私で欲を処理し、私は体を売って投資を得る。

「俺から動いてほしいのか?」

声に警告が混じる。私は裾を握りしめた。

彼が主導したら、たぶん耐えられない。

私は覚悟を決めて膝をつき、彼の前にしゃがみ込む。唇を開いてそれを含んだ。

大きな掌が後頭部を押さえ、さらに深く押し込まれる。

大きすぎて、息が苦しい。口に収まりきらない分を手で撫で、拙く舌で先端を舐めた。

口の中で脈打つ熱が、いやになるほどはっきり伝わってくる。

唇が閉じきらず、涎が糸を引いて口角から落ちた。濡れた感触が、私と彼の間を汚していく。

アレックスは喉を鳴らし、頭を仰いで快楽に息を吐いた。喉仏が上下し、整った顔に濃い欲が浮かぶ。

――卑しい。

そう思うのに、彼の低い吐息には妙な魔力があって、私の身体まで勝手に反応する。奥がじわりと濡れて、熱が溜まっていく。

昨夜、乱暴に抱かれた光景が一瞬で脳裏に蘇った。

私は無意識に脚を擦り合わせ、ゆっくりと腿をこすってしまう。少しでも紛らわせるように、少しでも快感を拾うように。

「ちゃんと舐めろ」

情欲で掠れた声が落ちる。

「自覚は足りないが、才能はある」

次の瞬間、頭を強く押さえつけられた。硬く熱い先端が喉の奥を叩く。

異物感に耐えきれず、胃が跳ね上がる。

「ん……っ、う……」

声にならない。口の中を塞がれ、潰れた音しか出せない。

それが彼をさらに昂らせたのか、腰が動き、口の中を乱暴に使われる。

唇が擦れてひりひり熱い。奥へ、奥へ。逃げる隙がない。

口が満たされているのに、下は妙に空虚で、余計にうずく。

初めて知るみたいな熱い欲が込み上げ、下着が濡れていくのが分かって、恥ずかしさに喉が詰まった。

涙が滲み、私は見上げてアレックスと目が合う。

「ボタンを外せ」

命令。

みじめでたまらない。でも逆らえない。

私は上着のボタンを外し、下着越しに胸の膨らみが分かるように晒した。

動くたび、胸が小さく揺れる。

今の私は、どれほど淫らなんだろう。

名門の令嬢の体面も、端正さも捨てて、床に跪き、玩具みたいに扱われている。目的はただ一つ。彼を満足させること。

アレックスは愉しそうに息を吐き、私の擦り合わされる膝に目を落として低く笑った。

「……いい面してる」

「嫌がってる顔のくせに、もう待てないんだろ」

「……」

私は唇を引き結んだ。

その拍子に、口の中のそれがきゅっと締まった。

アレックスが息を呑む。歯がわずかに当たったのだろう。

顎を掴まれ、口を離させられる。

碧い瞳が細まり、危険に光った。

「わざと?」

――そう。

でも、私は首を振った。認めない。

彼は苛立ったように笑い、もう一度ねじ込んでくる。低い声が脅す。

「次があったら――」

「歯を叩き割る」

動きはさらに荒くなった。喉が苦しい。涙が勝手に落ちる。

彼が限界に近いのが分かるのに、避けられない。

頭を押さえつけられたまま――口の中に、熱が溢れた。

生々しい匂いと塩気が鼻を満たす。

「飲め」

顎を掴まれ、命令される。

私は抵抗できず、喉を動かして飲み下した。

確認すると、アレックスは私を抱え上げ、そのままソファへ押し倒した。

視界が揺れて、背中が沈む。

「……ベッドに……」

それが、私の最後の願いだった。

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