第80章 甘える

オーロラ・ロスの視点

正直、困っていた。

マイルズのことが嫌なわけじゃない。

ただ――これ以上、あの人に借りを作りたくなかっただけ。

「材料まで、人に頼って手に入れるのは嫌なの」

意地になって言うと、アレックスは手元の書類から目を離さず、淡々と返した。

「それは工場側が払った補償金だ。俺は関係ない」

「……え?」

意味が飲み込めず、思わず聞き返す。

「工場の巡回担当が職務怠慢で、お前は他人のところで死にかけた。工場のオーナーが埋め合わせに『泉の玉』を寄越した。それだけだ」

言い切ってから、鼻で笑う。

「安い買い物だな。俺の女の命を、石ひとつで帳消しにするつもりか」

背...

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