第85章

オーロラ・ロス視点

私は怒りに任せて、電話をぶつ切りにした。

自分では、わりと温厚な性格だと思っている。

なのにアレックスだけは、いとも簡単に私の癇に障ってくる。

書類鞄を肩に掛けたまま、苛立ちを足音に乗せて大股で歩く。

すると黒塗りの車が、ゆっくりと並走してきて路肩に停まった。運転席の男が窓を下ろす。

横目で確認して、思わず声が出た。

「ケント! どうしてここにいるの?」

金髪の男は穏やかな笑みを崩さずに降り、後部座席のドアを開ける。

「ロス嬢。ボスの命令で、お送りいたします」

「……ずっと付いてきてたの?」

彼は相変わらず礼儀正しい笑顔のまま、答えない。

その沈黙...

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