第94章

オーロラ・ロスの視点

「だって――特別な人、だから」

私はそれだけ答えた。

マイルズは距離感の分かる紳士だ。私がそれ以上話したくないのを察したのか、深追いしてこなかった。

外は明るくなって、また暗くなって。けれど書斎の灯りだけは、ずっと同じ色のまま。

時間が、本当にない。

焦りを含んだ思考と、今すぐ形にしたいひらめきが頭の中で何度もぶつかり合う。暑くもないのに背中が汗でじっとりした。

でも胸を満たしていたのは、焦燥より――喜びだった。

自分の作品を待ち遠しく思い、この工程そのものを楽しんでいる。

デザイン案を仕上げた瞬間、指先も首も、長時間の作業でこわばっていた。顔を上げる...

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