第5章

茉奈視点

一週間が過ぎた。私は和人に連絡しなかった。メッセージにも返信しない。それでも私は今、黒川イノベーションズ社提携の法律事務所の会議室に座っている。

法務担当の責任者は四十代の女性だ。プロフェッショナルで、鋭く、単刀直入。彼女は財産分与契約書をめくりながら、どのページにも散らばっている赤い修正指示に目を通している。

「赤井さん、ここ、ここ、そしてここです」彼女のペンが各項目を軽く叩く。「羽原さんの法務チームは巧妙ですね。これらの条項は表面的には公正に見えますが、執行条件によって、彼らは譲渡を無期限に遅らせることができます。最大で二年です」

「二年……?」

「それからこちら...

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