第8章
茉奈視点
三時間が過ぎた。
和人は手術室の外で、身じろぎもせずに座っている。両手で髪をかきむしり、全身を震わせていた。頭上の照明は無情に冷たく、ドアの上の赤いランプは灯ったままだ。ドアは、固く閉ざされている。
彼の心の中では、彼女と過ごした一瞬一瞬が繰り返し再生されていた。カフスボタン。あのバーでのこと。初めてのキス。そして、ようやく彼を信じようと差し出した手。
お願いだ。どうか、無事でいてくれ。お願いだ。
ドアが乱暴に開け放たれた。
医師がマスクを外し、彼の方へ歩いてくる。和人は立ち上がったが、足がもつれて倒れそうだ。医師の表情は穏やかだった。やがて、彼は微笑んだ。...
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