第283章 まさか聞き間違えたのでは

ストレッチリムジンから降り立ったその人は背を向けていたが、横顔はこの世のものとは思えないほど美しかった。しかし、ほんの一瞬で向こうへ向き直り、姿は見えなくなってしまった。

「どうした」小崎頌がふと尋ねる。

「なんでもありません」佐々木海子はそれ以上語らなかった。

この場所は自分だけが来られるわけではない。あの人にも何か重要な用事があるのだろう。

まもなく個室に入り、コートを置いた佐々木海子は、室内の内装に目を奪われた。

広々とした空間は現代風の中国様式で統一されている。床には小川が引かれ、緋鯉が室内のせせらぎから中庭の池へと泳いでいけるように造られていた。

小崎頌は何か言いたげだ...

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