第326章 私はそこまで卑しくない

住友琛は魂を抜かれたようにふらふらと立ち去った。

幸いなことに、林田さやかが同じマンション群にいることを彼は知らなかった。

昨日ここへ内見に来た林田さやかは、即入居可能であることを知った。手荷物一つすら必要ない。佐々木海子がすでに手配を済ませており、服、アクセサリー、靴、バッグをはじめ、寝具、洗面用具、化粧品に至るまで、ありとあらゆる日用品が揃えられていたからだ。

これもまた、佐々木海子からの贈り物だった。

現在、林田さやかと住友直孝はそれぞれ個室を使っているが、安全を考慮して互いの部屋は向かい合わせになっていた。

その日の朝、林田さやかはまたもやつわりに襲われた。朝からトイレに抱...

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