第389章

 彼女は芸能界の人間として、名声というものがどれほど命綱か、痛いほどわかっていた。

 だからこそ、言葉も行動も慎重に。いちばん避けたいのは、ああいう最悪の出来事が「起きる」ことだ。ひとたび起きてしまえば、その芸能人のイメージは世間の中で固まる。名前を聞けば真っ先に思い出されるのは、その一件であって、積み上げてきた実績ではなくなる。

「大丈夫。落ち着きな」佐々木海子は気にした様子もなく、ぱっと手を広げる。「今は心配するタイミングじゃないし、そもそも心配するべきなのはわたしじゃない」

「佐々木海子!」とつぜん、近松嘉子が外から飛び込んできた。「どういうことよ、なんでこんな気持ち悪いものが送...

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