第419章 まだ私の質問に答えていない

事後、佐々木海子は人生でいちばんの演技力を総動員した。ふいに男をまっすぐ見据え、息をのむように言う。

「小崎颂、わ、わたし……見える!」

男は満ち足りた顔のまま横になり、うたた寝していた。だがその言葉を聞いた瞬間、がばっと身を起こして海子の肩をつかむ。

「……何だと?」

目に見えて、喜びが弾けた。

海子は泣き崩れるふりで目元をこすり、真剣な顔で彼を見つめる。

「うん。見える。……でも、ちょっとぼやける。最近……痩せたね。あなた――」

言い終える前に、強く抱き締められた。

用意していた胸を打つ台詞の数々は、肋骨がきしむほどの抱擁に押し潰され、喉の奥で行方不明になる。

海子は笑...

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