第103章 化粧

川瀬東は、堪えに堪えた。

いつもなら、とっくにキレている。

だが今日は事情が違う。撮っているのは公益のPR動画とはいえ、スポンサーが付いている。

しかも、そのスポンサーがもう到着している。今すぐ回さなければならない。

ここで夏川懐星を追い出したところで、この短時間で代役など見つかるはずもない。

川瀬東は怒りを喉の奥へ押し込み、歯を食いしばって言った。

「……すみません」

夏川懐星は夏川紅蓮をちらりと見て、許すのかと目で訊ねる。

紅蓮は小さくうなずいた。

彼女は状況を確かめに来ただけだ。懐星に面倒を背負わせるためじゃない。

紅蓮がうなずいたのを見て、夏川懐星は川瀬東の言う通...

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