第107章 平手で打った

男はマスクだけでなくサングラスまでかけ、顔のほとんどを隙間なく覆い隠していた。

だが、マスクの縁から覗いた頬に――膿んだ吹き出物が一つ。

夏川紅蓮はその膿疱を見て、相手が江口沢だと即座に見抜いた。

江口沢は仕事の用で来たらしく、股に書類鞄を挟んでいる。

本当は、顔を出さなきゃいけない場に出たくなかったのだろう。だが部署の連中は手が離せず、かといって高見唯月に頼む度胸もない。結局、契約書を届けるために渋々ここへ来た――そんなところだ。

とはいえ、ここまで徹底して顔を隠すのは不自然だ。

夏川紅蓮には理由が分かっていた。

あの顔は、解毒剤でも使わない限り、一生元には戻らない。

江口...

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