第109章 彼、ちょっとおとなしい

「コンコン」

ノックが二度。静まり返った廊下に、やけにくっきり響いた。

――なのに、中は無人みたいに静かだ。

いや、そんなはずはない。相馬部長は、諏訪淳行は中にいると言っていた。

聞こえなかったのかもしれない。夏川紅蓮はそう思い、もう二度、扉を叩く。

「コンコン」

それでも返事はない。

胸の奥に、むっとしたものが湧いた。

本当は来るつもりなんてなかった。まいに借りがあって、しかも「諏訪淳行が待ってるから」と念を押されたから来ただけだ。

それなのに受付で嫌味を言われ、挙げ句にノックしても無視。

昔の自分なら、受付で足止めされた時点で踵を返していた。

会いたくないなら、勝手...

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