第111章 俺はクズ男じゃない

諏訪淳行はゆっくりと目を上げ、まるで一寸ずつ測るように彼女の表情を確かめた。

求めていたもの――たとえば喜びの色――は見つからなかったのだろう。唇の端に、諦めにも似た苦笑が浮かぶ。

「別に、何かを言外に匂わせたいわけじゃない。ただ、自分の潔白を証明したかっただけだ。俺には彼女はいない。前にお前が思ってたみたいな、二股かけようとするクズ男でもない」

夏川紅蓮は、自分の心は凪いでいるはずだと思った。けれど、その凪に、ふっと風が触れた気がした。

「……っ、こほっ!」

彼女は咳払いをしてから言い訳じみた声を出す。

「別に、あなたのことクズ男だなんて言ってない」

「でも、そう思った」

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