第113章 引き抜け

呼び出し音は二度鳴っただけで、すぐに繋がった。

「ボス、どうしました? いきなり電話なんて」

受話器の向こうの男は西澤映。親しい者は皆、ぶんと呼ぶ。

ぶんはきちんと経済大学を出た人間で、暗部が表で持つ事業を任されていた。

目利きは鋭く、嗅覚も毒みたいに正確で、暗部に相当な利益を運んできた男だ。

もともとは上場企業で押さえつけられていた末端社員に過ぎなかった。だが夏川紅蓮が彼を見出し、暗部へ引き上げたことで、ようやく才能の居場所を得た。

紅蓮には恩がある。ぶんはそれを骨身に染みて分かっている。

ただ、普段ボスが彼に直接連絡してくることは滅多にない。

陽の当たる事業はすべて彼の名...

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