第129章 生死の瀬戸際

夏川懐理の額が、ひりつくように痛んだ。

けれど真っ先に視線が向いたのは、自分ではない。夏川紅蓮のほうだった。

「ナナ、大丈夫か!」

夏川紅蓮は首を横に振る。

とっさにドアの取っ手を掴んだ。だから身体をぶつけずに済んだのだ。

「懐理兄さんこそ、大丈夫?」

「平気。ちょっと擦りむいただけだ。たいしたことない」

夏川紅蓮は頷く。

「帰ったら、軟膏塗ってあげる」

運転席の執事が、申し訳なさそうに振り返って頭を下げた。

「申し訳ございません、六男様、ナナ嬢様。前の車が急ブレーキを踏みまして……追突しそうで、こちらも踏みました。車間を取れていなかった私の落ち度です」

「あなたのせい...

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