第130章 心に波紋が広がる

嵐の中でも、諏訪淳行の足取りは揺るがなかった。

黒いトレンチコートの裾が風にあおられ、鋭い弧を描いて跳ねる。

雨粒が前髪を伝って落ちても、みじめさは欠片もない。むしろ冷えた気配をまとわせ、近寄りがたいほど端正に見せた。

深い眉目。通った鼻梁。結ばれた唇は、淡々とした線を引いている。

背後で風雨が唸っているのに、それさえ彼の背景に過ぎない。

その姿を、いっそう大きく、凛と際立たせていた。

夏川紅蓮は一瞬、動きを忘れた。

胸が――その瞬間だけ、ひゅっと拍を落とす。

手はまだ車のドアにかかったまま。なのに、彼の視線に縫い留められたみたいに離せない。

諏訪淳行が口を開くまで。

「...

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