第132章 あの夜の女は、彼女だ

夏川家との婚約の件で、南雲穂香は本来なら諏訪会長に電話して、「ご縁がありませんでした。ご厚意だけ頂戴します」と断るつもりだった。

けれど、夏川紅蓮の歓迎宴の日――諏訪淳行が自分の気持ちをはっきり示したせいで、穂香はその電話をかけなかった。

だからこそ、諏訪会長は淳行に確認を入れたのだ。

淳行が断るに決まっていると思っていた会長は、情に訴え理で押し、最終的には『もう長くないんだ、死ぬ前に孫の顔を見せてくれ』とでも言って迫る腹づもりだった。

ところが――

諏訪淳行は開口一番、こう言った。

「夏川のお嬢様、悪くないと思う」

電話の向こうで、諏訪会長がしばらく固まった気配がした。

用...

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