第158章 海市の暗部

高見正国は言った。

「彼は身分が特殊でして……夏川嬢が往診できないのであれば……申し訳ありませんが、身元はお話しできません」

「紅蓮……」

夏川奥様が不安げに娘へ視線を送る。

紅蓮も、その意味は痛いほど分かった。

身分が身分だ。もし自分の手で万が一でも起これば、取り返しがつかない。

奥様は、娘に危ない橋を渡ってほしくないのだ。

奥様にとって、得にもならない話ならなおさら――娘の身の安全に勝るものはない。

けれど夏川紅蓮が考えたのは別だった。

そこまで「特殊」な相手のために、高見正国が二度も頭を下げ、しかも今日はわざわざ家まで来ている。

……なら、一度くらいは見てみる価値が...

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