第187章 あまりにも単純だ

電話のベルが不意に鳴り、夏川紅蓮はびくりと手を震わせた。

二時間かけて仕上げてきたものが、危うく台無しになるところだった。

これは相当繊細な作業だ。ほんのわずかなミスで、それまでの積み重ねが全部水の泡になる。

――それでも、最後は手を落ち着かせた。

だが着信表示を見た瞬間、紅蓮は作業をいったん置き、通話をつないだ。

「もしもし。どうしたの?」

『松本信介が午後、会社に来た』

「松本市長?」

『ああ』

「何しに?」

諏訪淳行は、さも可笑しそうに当時の様子を語り始めた。

『うちを『模範企業』に認定するとか言い出してさ。記者まで連れてきて、しかもわざわざ俺のオフィスでインタビ...

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