第198章 蛇山

諏訪淳行のほうは暗雲が垂れ込めているというのに、夏川紅蓮の胸の内は、珍しく軽かった。

いっそ車でカエデの苑まで行って、諏訪淳行に言ってしまおうか――自分も、あなたと一度やってみたい、と。

……けれど、その考えは途中で引っ込めた。

紅蓮は根っこが古風な女だ。真夜中に男の家へ押しかけるなんて、そんな真似はできない。

なら、こちらで予定している二つの用事が片づいてから、きちんと腹を割って話せばいい。

時間なら、いくらでもある。焦る必要はない。

高鳴っていた鼓動が、少しずつ静まっていく。紅蓮はハンドルを握り直し、落ち着いたまま車を家へ向けた。

家に着くと、小型犬の「将軍」が尻尾をぶんぶ...

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