第23章 婚約

夏川紅蓮は背筋を伸ばし、きちんと居住まいを正した。

「……お話しください」

南雲穗香は言葉を選ぶように少し間を置いてから、静かに切り出した。

「あなたに縁談を決めたの」

夏川紅蓮ははっと顔を上げた。耳を疑う。

何秒かして、ようやく声が出る。

「お母さん……私、やっと帰ってきたばかりなのに。もう嫁がされるんですか?」

――まさか、南雲穗香も高柳月代と同じなのか。

心の中には、最初から娘の居場所なんてなかったのか。

もしそうなら、ここに残る意味なんてない。

だが、南雲穗香は目を赤くしながら言った。

「母さんだって、できることならもっと長くそばに置いておきたいわ。でも今の家の...

ログインして続きを読む