第29章 記憶を消す

諏訪淳行がどこに住んでいるのか――それは、別に隠されている話じゃない。

たにはすぐ調べをつけた。居所はカエデの苑。

「その別館、もともとは欧州人の資産だったんだ。持ち主が亡くなったあと、子どもが競売にかけてね。1平方メートル600万で落札された。いまは諏訪淳行がそこに住んでる」

「了解。明日、行ってみる」

たには釘を刺す。

「カエデの苑は警備が厳しいことで有名だ。そう簡単には入れないと思う」

夏川紅蓮は短く「うん」と返し、それから淡々と言った。

「分かった。先に連絡する。向こうが会う気なら、わざわざ出向く必要もないし」

通話が切れた。

たにが次の用件に取りかかろうとした、そ...

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