第30章 バッグを買う

高見唯月は今日、どういうわけか高見家で散々な目に遭い、腹の底に溜まった苛立ちを抱えたまま自宅へ戻るなり、物を投げては叩き壊していた。

江口沢はなす術もなく、彼女の機嫌を取るために一人で外へ出る。唯月が好きなバッグを買って、少しでも宥めるつもりだった。

――高柳月代を海市へ呼び寄せたことは、まだ言えない。

唯月は昔から、沢の母をあまり好いていない。まずは機嫌を直させないと、とても口にできなかった。

とはいえ江口沢の財布にも限界がある。大金を突っ込むのは惜しい。あれこれ見比べて、ようやく選んだのはベーシックな定番モデルだった。

こういう無難なバッグは、本来なら高見唯月の眼中にない。だが...

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