第32章 彼は、とても期待している

江口沢はまさか、自分が金で呼びつけた連中が夏川紅蓮にへこへこと頭を下げ、あまつさえ矛先を自分へ向けてくるなど夢にも思わなかった。

反射的に逃げ出そうとする。だが背後は、そそり立つ高い壁。

この瞬間、罠にはまったのは――自分のほうだった。

江口沢は見る見るうちに青ざめ、顔色を失っていく。

「ま、待て……! 俺は金を払ったんだぞ! こんなのありかよ!」

だが数人の顔には、かけらも情けが浮かばない。

じりじりと間合いを詰められ、江口沢の表情はいよいよ引きつった。

「彼女がいくら出した!? 俺は倍払う! いや、3倍だ!」

こいつらは本物のならず者だ。

こんな連中の手に落ちれば、ただ...

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