第40章 お嬢ちゃんが怒った

隣の部屋では――。

夏川懐斗は手当てを受けて容体がいったん持ち直していた。ところが、どういうわけか水をひと口飲ませた直後、突然、血を吐き始めた。

しかも吐いた血は、どれも黒ずんだ色をしている。

夏川紅蓮が駆けつけた時には、床にすでにどっと血だまりが広がっていた。

「ナナ……」

夏川紅蓮の姿を見た途端、光を失っていたその目に、ふっとかすかな明かりが戻る。

夏川紅蓮は小さく首を振り、声をひそめた。

「紅蓮って呼んで」

彼女は、諏訪淳行をまだ完全には信用していない。

相手の立場はあまりに特別で、しかも――厄介なほど複雑だ。だから当面は、自分が夏川家の令嬢だと知られたくなかった。

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