第42章 婚約破棄

安原雅子は自分に大した取り柄がないと分かっている。

最大の武器が何かと言えば――ベッドの上だ。

あの日、別館では失敗した。とはいえ、状況が特殊だったのも事実。

部屋には諏訪淳行だけじゃなく、彼の手下が大勢いた。あれでは手を出しようがない。

だが、淳行のそばから人がいなくなった瞬間。

彼女の「出番」が来る。

夏川紅蓮はしばらく歩いて、ようやく背中に刺さっていた視線が消えたのを感じた。

人を見る目には自信がある。

さっきの女――男を何人も渡り歩いてきた類いだ。

まさか諏訪淳行が、ああいうのを好むなんて……。

……ともあれ。

自分と諏訪淳行の婚約なんて、成立するはずがない。

...

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