第57章 盗用

夏川瑠璃は、もう迷わなかった。

一刻たりとも、ぐずぐずしている暇はない。今すぐ高見浩然に会わなければ。

世の中には女なんていくらでもいる。ほんの数日顔を見せなかっただけで、高見浩然の気持ちが変わらない保証などどこにもなかった。

夏川瑠璃は素早く連絡先を探り、絵画界の大家・相馬照の電話番号を見つけ出す。ひとつ咳払いをしてから、発信した。

コールはすぐに繋がった。

「もしもし、どなたですかな」

受話器の向こうから聞こえてきたのは、相馬照のやや年老いた声だった。

「相馬先生、こんにちは。夏川瑠璃です」

名乗ると、幸いにも相馬照は彼女の番号を登録していなかったものの、瑠璃のこと自体は...

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