第63章 行くな!

夏川紅蓮は、そもそも須藤美代とこれ以上やり合う気などなかった。

「忙しいの。あなたに付き合ってる暇はないわ」

そう言い捨てると、紅蓮はまいを連れて立ち去ろうとする。

さっき主展示室のほうへ向かったのも、探している「古い弟子」がいるからだ。まだ見つかっていないのに、須藤美代の挑発に乗って口先で勝ち負けを競うほど、紅蓮は暇ではない。

絵の問題点を指摘するなら、本人に直接言う。無関係な人間に向けて言い合う筋合いはない。

だが、その反応こそが須藤美代の確信を強めた。

――この女、芸術なんて分かってない。

分からないくせに、分かったふりをして相馬先生の絵を侮辱している。もしかしたら、相馬...

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