第74章 彼女ただ一人だけ

夏川紅蓮は、さっき自分が何をしていたのかを説明しづらくて、わざと拗ねたふりをした。

「さっき私のこと探してたの? でも、ここで絵を眺めて、ずいぶん楽しそうだったじゃない」

夏川懐理は単純だ。紅蓮のその一言で、あっさり話の軸を持っていかれる。

頭をかきながら、焦ったように言い訳した。

「嘘じゃないよ。ほんとに探してた。ただ、たまたまこの絵の前を通ってさ……すごく良くて、ほんの数秒だけ足が止まったんだ。でも、ほんとに数秒だよ。すぐまた探そうとしてた」

心底心配そうな顔を見て、紅蓮は思わず笑ってしまう。

「そんなに緊張しないで。怒ってないよ、からかっただけ。……で、どんな絵がそんなに良...

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